花園会館は臨済宗妙心寺派が経営する宿泊施設。
客室81室を有し、一般観光客、檀信徒、修学旅行生も受け入れています。
https://www.hanazonokaikan.com/
プラスチックごみ削減の取組
かねてより、宴会場での食品ロスの削減など、ごみの減量に取り組んできた背景もあり、プラスチック新法の施行に先立ち、2021年8月にアメニティの見直しを行いました。納入業者である株式会社JTB商事に相談を持ちかけ、提案の中から「mugicara」シリーズを採用。mugicaraシリーズのアメニティは、歯ブラシやヘアブラシ等のプラスチック部分の原料に、一部、ムギの廃棄部分からなる再生可能な生物資源を使用しているため、石油由来のプラスチックを29%削減。包装材についてはプラスチックを89%削減しています。クラフト調で温かみのあるデザインもホテルの雰囲気に合っていると考えました。
アメニティの切り替えと同時に、アメニティを部屋に備えておく「部屋入れ」を止め、フロントにて提供する形へ変更。フロント脇に設置した「アメニティバー」から、歯ブラシ、カミソリ、ヘアブラシ、コットンセット、そしてお茶やコーヒーなども、お客さまの必要や好みに応じて自由に客室へ持ち帰ってもらっています。
また、客室のボディソープやシャンプー類も個包装ではなく充填式のディスペンサーで提供しています。
お客さまの反応
リピーター客が多いことから、「部屋入れ」の廃止は不評を買うのでは?と懸念していましたが、クレームはゼロ。環境に配慮したデザイン性の高いアメニティ、必要なものを客室に自由に持ち帰ることのできるシステムに、「環境に配慮した取組の方が良い」とむしろ好意的な声が多く寄せられています。
取組のメリット・デメリット
メリットとしては、アメニティは水回りに置くため、水濡れにより未使用でも廃棄となるケースも多かったのが、フロント提供により無駄な廃棄がなくなった点。また、従来は連泊のお客さまにも毎日補充を行なっていましたが、その必要がなくなり、全体的に使用数は減っています。
一方で、これまでの安価なアメニティに比べると、価格は2~3倍。コスト的なデメリットは正直小さくありません。使用数の減少は約1割にとどまり、価格差を埋めるほど減ってはいませんが、お客さまの反応が良いことから、広告宣伝費と捉えています。他のメリットとしては、アメニティの補充の手間がなくなり、客室清掃の効率化にもつながっている点があります。
これからの展望をおききしました
28年前に今の建物に建て替え、元々の宿坊とは違う、現代的なホテルとして営業してまいりました。近年は原点に戻り、「お寺のホテル」をコンセプトに掲げています。お寺の良さを生かし、坐禅や精進料理などを体験してもらえるような、花園会館ならではの禅プランをお客さまへおすすめしています。
仏教の教えという原点に回帰すると、「無駄を省く」ということへ自然とつながっていきます。アメニティの「部屋入れ」はホテルとしては常識でしたが、お客さまのご理解をいただきながら、切り替えることができました。
現在は使用済みのアメニティを産業廃棄物として廃棄していますが、アメニティの水平リサイクルのスキームが確立されたという話もあるため、今後は、リサイクルも検討していきたいと考えています。
そのほか、タオルを包むポリ袋は本当に必要だろうか、部屋のグラスを包む「消毒済み」の袋はどうか、お客さまのマイボトルにコーヒーなどの飲み物を提供するのはどうか、など検討すべきことは他にも多くあります。
ホテル全体で意識を高めるために、お世話になっている廃棄物処理業者の方に、従業員に向けてレクチャーをしていただいています。ごみを減らし、リサイクルすることで、処理費用がかからなくなること、廃棄物にかかるコストが運搬費だけになることなどを従業員で学んだりしています。今後、アメニティ以外の部分でも、見直しを進めていきたいと考えています。
(総支配人 奥田和宏氏/2023年3月)