笹屋伊織

江戸中期より御所御用を勤める京菓子の老舗。全国の百貨店に多く出店しており、近年は和菓子の魅力を広く伝えるカフェも手がけています。
https://www.sasayaiori.com/

包装の簡素化

包装紙をかけ、セロハンテープを用いることなく紐がけされた和菓子の包みには、凛とした美しさが宿っています。笹屋伊織は全国展開しているにもかかわらず、そんな無駄のない包装に今もこだわっています。
長く続いてきた良さを受け継ぐと同時に、過剰包装を控える動きにも敏感です。代表銘菓である「どら焼」は5年ほど前に包装を見直し。包装紙・栞・箱を一体化させ、伝統の意匠も引き継いだ専用箱へ切り替えました。包装資材の使用量を減らし、コストが下がっただけでなく、従業員の包装にかける時間と手間も軽減させる結果となりました。2023年に復刻した菓子「長福寺餅」も同じ考え方で、店頭で包装する必要のないパッケージデザインを採用しています。

折り目正しい包装スタイル

銘菓「どら焼」の専用箱は包み紙・栞・箱を一体化したもの

包装不要なデザインを採用

プラスチック削減の取組

お中元・お歳暮の進物では、包装紙を全面に包むのを止め、掛け紙にすることで、紙の使用量を抑えました。また、従来はギフト箱の中に仕切りのプラスチックトレーを使用していましたが、それらをほぼ全て紙に変更。組み立ての手間はかかりますが、2023年のお中元から本格的にスタートすべく準備を進めています。

従来のプラスチック製仕切り 変更後の紙製の仕切り

カフェ「SASAYAIORI+」での取組

新宿御苑、京都御苑のカフェ「SASAYAIORI+」では、管轄の環境省から「環境に配慮した運営」を求められていることから、テイクアウト用の資材は慎重に選びました。竹やバガス(サトウキビを圧縮したあとの絞りカス)、ペットボトルからマテリアルリサイクルしたプラスチック、バイオマスプラスチックなど、環境負荷の低いものを優先的に使用しています。

新宿御苑と京都御苑のカフェ「SASAYAIORI+」では環境に配慮した容器で提供

これからの展望をおききしました


元来、和菓子は個包装などせず、桜の葉や笹の葉、竹の皮などに包み、自然と共にありました。ですが、プラスチックはとても便利なもので、世の中の流れとしても「日持ち」が求められるようになり、和菓子の世界にもプラスチックは広がりました。
今ではプラスチックの問題点がよくよくわかってきましたので、やはり減らしたい、そう考えています。全部をなくすのは難しいですが、多少コストが上がるとしても、紙やバイオマスに切り替えるなど、できることを探しています。

私どもはお菓子屋ですので、包装材を作ることはできません。ただ、環境への配慮に関心をもって取り組んでいることを取引先に伝えていれば、いち早く、環境に配慮した商品の情報を寄せていただけます。ですので、常にアンテナは伸ばしておきたいと思います。300年続く老舗として、先駆者となり、取組を発信していくこともまた、大切な役割と考えています。

環境のこと以前に「ものを大事にする」という、当たり前のことが根底にあります。修理しながら、長く大事に使っているものが弊社には多くあります。職人の使う秤、発送の作業台、社内の書類には裏紙を使うのも常。そういった心は、この先も大切に持っていたいと思います。

(十代目女将 田丸みゆき氏/2023年3月)

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